やりたいのはWebセールスなのですか?Webマーケティングではなかったのですか?

本日、以下のような記事が上がっていました。

「日本のネット上の売上が米中企業に大量流失している 衝撃データが初めて明らかに」
https://www.buzzfeed.com/jp/daisukefuruta/duopoly-in-japan

右肩上がりで頼みの綱となるインターネット広告も、その50〜70%が海外に流れているという実態は衝撃的だ。

これは、日本のインターネット広告業界の現状を表す、非常に重要な指摘だと考えます。

しかし、売上以上に大事なことがあると思います。
それは、広告の配信過程のマーケティングナレッジが、日本国内に残っていないということです。

日本企業が伸びていくことは、やはり同じ日本国民として誇らしいし、嬉しいものです。ですが、イノベーティブなプラットフォームは国籍問わず、どんどん使えば良いと思います。

その結果が、ただ、この数値に現れているということかと考えます。

[ プラットフォームを使わされているのか、使いこなしているのか 、それが重要]

どんなプラットフォームを使うにしても、
「使わされているのか」
「使いこなしているのか」
が重要ではないでしょうか。

Webマーケティングがなぜ伸びているのか、
運用型広告がなぜ伸びているのか。

それは、細かなターゲティングができることなどがありますが、
それと並んで重要なのがフィードバックデータを得られることだと思うのです。

しかし、一体どれくらいの広告主が、このデータを解析し、ナレッジ化できているのでしょうか。ストレートに言いますと、CPAの結果だけ見て、判断してしまっていない企業がどれくらいいるのでしょうか。

フィードバックデータは、確かに効果が把握できる数字です。CPAを追うこと自体、否定するものではありません。
しかし、そのデータは、改善のヒントを与えてくれる数字でもあるのです。しかも、課題設定をすればするほど、さらに多くのヒントを得られるのです。

CPAだけ見て判断してしまっているということは、そのヒントを全て捨てている、ということなのです。

[ クリック率に意味を見出せますか? ]

インターネット広告を、獲得型メディアとして位置付ける企業の多くは、
クリック率で結果を評価することに、あまり意味を感じないと言ってしまうことが多いと感じます。

「CVR、CPAまで見なければ意味がない、その分析に価値を感じない」、と。
本当にそれでいいのでしょうか?

まず考えてみて頂きたいのです。

そのKPI(コンバージョン設定)は、100%正しいものでしょうか?
それを自信をもってYESと言えるならば、それで良いかもしれません。

自信をもってYESと言えるかどうかは、LTV(Life Time Value)やアトリビューション分析などに、1円の価値も魅力も感じないと言い切れる場合です。

なぜなら、初めて接したAIDMAでいうアテンション層のユーザーも、もう購入直前のアクション層のユーザーも、同じ指標で評価していることになるからです。

そうでない場合、全ての指標にヒントがあります。クリック率は、非常に重要なデータの1つです。

それを説明してみましょう。

皆さんは、広告のセンテンスの最大の目的は何と考えられるでしょうか?

ダイレクトマーケティング界の偉人、ジョセフ・シュガーマンは
『全ての広告のセンテンスの目的は「次のセンテンスを読ませること」』と言っています。

加えて、順々にセンテンスを読ませる構成を取ることで「滑り台効果」が生まれる、とも言っています。

この意味で、広告の位置付けを考えてみると、LP(ランディングページ)の前文と捉えることができます。


つまり、広告の最大の目的は、次のLPの最初のセンテンスを読ませること、と言えるのです。
この効果を発揮できる広告と、そうでない広告は異なります。同じCPAをみるにしても、その過程で、滑り台効果を発揮させられているのか、その視点でクリエイティブを評価することなのです。

この結果がクリック率に大きく現れると考えています。

したがって、インターネット広告を獲得目的としながらも、クリック率に注視できる企業は、つまり、広告の重要因子を、そのヒントを見つけ出そうとすることができていると言えるのです。

このように、Webマーケティングは、課題を設定すると、さらにより価値の高いフィードバックデータを手にできるのです。

[ プラットフォーマーから取り返すべきものはシェアじゃない ]

話を戻しましょう。
現在、最も学習する主体が広告主企業ではなく、プラットフォームになっています。

そこで、考えて欲しいのです。
広告クリエイティブは、一体誰のものでしょうか。
これをよくする事で、最も得をするのは、誰なのでしょうか。

当然、これは広告主企業だと思うのです。その意味で、クリエイティブは商品・サービスの一部を為すものだと思うのです。

その重要なクリエイティブの配信結果から得られるナレッジを最も蓄積している主体者が、広告主企業ではない、のです。
これこそ、とても恐ろしいことではないでしょうか。

いつ、誰に、何を届けることが、最もユーザーの態度変容を引き起こせるか、
それを最も把握しているのが、商品・サービスを提供する広告主企業ではないかもしれないのです。

ここが重要だと考えているのです。

Googleを始めとする、プラットフォーマーがWebマーケティングをとてもやりやすく変えてくれました。

日本の売上シェアが取られていることを悲観するよりも、Webマーケティングをここまで進化させてくれたことに、日本でもそれを起こしてくれたことに、その挑戦をしてくれたことに感謝すべきだと思うのです。

だから、最も取り返すべきは、売上シェアではないと思います。彼らがいるからこそ、高いステージでマーケティングができているのです。(もちろん、さらに高いステージを誰かが作ることができ、もしそれが日本企業なら、それほど誇らしいことはありません。)

しかも、取り返すのは、プラットフォーマーからではありません。これまで捨ててきたデータやナレッジのゴミ箱から取り返すのです。
それを繰り返すことが、「イノベーション力」とも言える巨大な力になるのだと考えています。

インターネット広告でやっているのはWebセールスなのでしょうか?

いや、違うはずです。Webマーケティングをやっているのではないでしょうか。
つまり、「売ること」が目的ではなく、「売り続けること」が目的なはずなのです。その重要なヒントを、ナレッジを捨ててしまっている現状は、これに反していることと言えないでしょうか。

だから、最も取り返すべきは、売上シェアではなくナレッジなのです。

[ まずは、少し疑い、小さく始める。 ]

しかし、個別企業がプラットフォーマーほど、データを得られないのは事実です。企業にとって、これは簡単なことではありません。
配信媒体やフォーマットによっては、ほとんどデータらしいデータを得られないこともあるのです。

しかし、諦めてはいけません。

まず、ターゲティングやオークションに関しては、プラットフォーマーほどデータを得られません。これは構造上、致し方ありません。

しかし、クリエイティブは違います。クリエイティブは、商品やサービスの一部であると考えます。そのモノやコトを、対象に”伝えること”なのですから、最もそのレバーの鍵と、データを握れるのは、広告主なのです

商品パッケージが、商品の一部であるのと同じように。

ブランドが、商品の一部であるのと同じように。

クリエイティブもまた、商品やサービスの一部なのです。

この意識を始めることができれば、取り返しは半分成功したも同然と考えて良いのではないでしょうか。


そして、「少し疑うこと」からはじめれば良いでしょう。

疑う、というのは、課題設定をする、ということです。
このクリエイティブは、いいと思っているけど本当に評価されるべきものか。クリエイティブは、つまり、製品そのものの機能や性能を表現したものであったりします。そのクリエイティブが作り出す印象のようなものであったりします。

・本当に、どの世代にも受けるのか。
・どのような顧客の興味段階でも受けるのか。
・媒体のローテーションは正常に動いているのか。
・一度でた結果は、恒常的に使えるのものなのか。
・過去の獲得したナレッジは、今でも使えるものなのか。

こう言った小さな疑いを持つことが重要です。

次に、無理をしないで「小さく始め」ましょう。いきなり、全体成果を改善することを狙うと、何もできなくなります。

インパクトよりも、小さな疑問に答えを出す、最短で最小の選択肢を取っていくのです。そのうちに、確からしい、因子を見つけ出すことができるでしょう。

これが、クリエイティブのA/Bテストなのです。

[ 最後に ]

結局このような小さなナレッジの蓄積の果てに、海外勢のプラットフォーマーのような大きな成功があると思うのです。

Googleは、散財するWebのデータを集めることから始め、偉業をやり遂げました。Amazonもマニアックな本を売るところから、偉業をやり遂げました。そして、まだまだ進化を続けようとしています。

でも、この2社が、このような成果を短期間で作り上げた訳ではありません。最初は誰しも小さくはじめて来たと思うのです。

インターネット広告が出てきたおよそ20年ほど前の、この発想とアクションの小さな違いが、今の海外勢のシェアの差だと思うのです。

日本は、ものづくりの国と言われます。技術力も高い国とも言われます。とても誇らしいことです。

しかし、作れば売れる時代が終わったことも、事実です。

だからこそ、です。日本企業が、売り続ける仕組みを科学できれば、もっともっと、この国の企業は世界に貢献できるのではないでしょうか。

だから、多くの日本企業に、ナレッジを取り戻して欲しい。
そして、次の20年には、ぜひ巻き返してほしい、と願います。

そのために、当社はクリエイティブのA/Bテストを、もっと当たり前で、もっと自然で、やるかやらないかを考えることなくやる世界にしていきたいのです。

「まるで、息をするかのように、クリエイティブテストを。」

これが、アドサイクルのスローガンですが、

これを掲げる背景や課題感には、このような想いがあるのです。

この記事をシェアする

SNSでもご購読できます。